「成功体験がない」という褒め(?)言葉

「君には成功体験がないのがいいね〜」

これは、確か15年ほど前に会社のあるOBから会合の席で放たれた言葉である。これは皮肉かとも思ったが(おそらくその方はそのつもりだった)、自分なりの解釈では応援のメッセージであり、ある意味でお褒めをいただいたものと勝手に思い込んでいる。

前職での33年という長い間、上司や同僚など社内関係者、顧客担当者、取引関係者外の多くの人からさまざまな支援を受けてきたことがあったからこその33年間であった。本当に人に恵まれていたという実感がある。

入社数年後から退社直前に至るまで自分のやりたい仕事をやらせてもらったことがなによりも有り難かった。その一方において、会社への貢献という意味で胸を張って言えるものがほとんどかったことは申し訳ない気持ちである。

25年以上に知り合えた取引先、お客様とはいまでもお付き合いをいただいている方が何人かいる。その一方では、なにかと気にかけてくれた忘れがたい一番の恩人と言える方とは長年音信不通となったままとなっている。もうその方は75歳を過ぎたくらいか、まだ携帯電話の電話帳には残ったままにある。つながるかどうかわからないが、勇気をもって一度連絡をしてみようかと、思うものの自分のことを覚えてくれているかは自信はない。

冒頭のOBの方は今年90歳になる。コロナ禍が落ち着いたころに訪ねてみたいと思っているが、その時にはどんな皮肉を浴びせられるだろうか。

心のよりどころービル・ゲーツの金言ー

平成7年(1995年)5月10日の日経新聞に掲載された「ビル・ゲーツからの電子メール」というコラムの切り抜きを今もなお大事に手元に残している。
すでにその切り抜きは、端がきれ、茶色に変色し25年という年月を感じざるを得ない。

そこには以下の言葉が綴られている。

「ミスを冷静に建設的に対応するのと、軽視することとは違う」

「ミスがすぐ責任につながらないとわかれば、アイディアを出し合って変革を提案しようとする雰囲気が生まれてくる」

「率直に言って、マイクロソフトが直面している問題のひとつは、ほとんどの従業員がたいした失敗を経験していないことだ」

そしてさらには

「ミスをした人を会社は必要としている」

「どんな会社にも、ミスをして、それを最大限生かしたことがある人が必要なんだ」

と結ばれている。

この記事を目にしたのは36才になったばかりの年。会社に入社して丸10年、本流とは違った少し異端的な仕事をしていた頃で、さまざまな悩みをかかえ自分なりに必死に仕事に向き合っていた頃である。はたして自分はこの会社に必要としているのかさえ思うことがあったが、肩の力がすっと抜けて救われた気分にもなった。

以後、この記事を数年にわたり、新入社員のオリエンテーションの場で紹介し、鼻向けとして紹介したこともあった。

この年の8月、マイクロソフトはWindows95を発売、世界に旋風を巻き起こしパソコンの世界に革命を起こしたことは記憶に新しい。